E道祖神(どうそじん)
 
道祖神
 道祖神は、旅行の安全や道案内の神様として、村の入り口や辻などに祭られていますが、海老名市内には、92か所、136基あります。最も古いのは、享保6年(1721年)のもので、上今泉(かみいまいずみ)井戸坂上にあるものです。
 道祖神のある場所は、黄泉の国(あの世)への出入口で、人に悪事をさせようとする神様が、勝手に出入りするのをそこで、さえぎってくださると信じられています。
 黄泉の国には、頭の毛がなくて目が一つきりの神様がいて、この神様は、毎年12月8日の晩にやってくるので、8日の小僧と書いて「八日僧」(ようかぞう)といわれていました。
 八日僧は、やってきた晩に村中を回って、一軒一軒、村人の数を調べ、次の年、伝染病であの世へ連れて行く人の名簿を作ります。そしてこれを道祖神に預け、「1月15日になったら受け取りに来るからな。」と言って、いったん帰るのです。
 しかし、八日僧がもどってきたときに、この台帳をそのまま渡したら大変なことになります。道祖神は考えに考えた結果、前の日の1月14日に自分の家に火をつけて丸焼けにしてしまいました。そして、翌日、八日僧が訪ねたときには、「火事で帳簿が焼けてしまいました。」と説明しました。すると八日僧はあきらめて、黄泉の国へ帰ったということです。
 このいい伝えから、1月14日には、道祖神の前で火祭りをするようになったのです。ここで言う伝染病とは疱瘡(ほうそう)のことで、これは、昔、治す方法も薬もなく、患った人は、全身に発疹ができてそれがくずれると皮がむけ赤裸になってしまうこわい伝染病でした。ですから人々は、この病気をふりまいて歩く疱瘡神を非常に恐れ嫌っていました。
 神様の前でたく火のことを「紫灯」(さいとう)といいますが、海老名では「せいと」と呼び、道祖神の前での団子焼きを「せいと焼き」または「どんど焼き」とも呼んでいます。
 ある年のこと、1月14日に大雪が降って、せいと焼きができなかったことがありました。その時、まじめな男の人がたった一人で火祭りをし、団子を焼いて帰ったそうです。
 たまたまその年は疱瘡が大流行して村中が寝こんでしまったのですが、男の人の家からは、一人も病人が出ませんでした。それからは、どんなに天気が悪くても、村中総出でせいと焼きをすることになったそうです。
                             (えびなむかしばなし 第3集より)

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